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■ exc.例外事象監視局

exc.例外事象監視局
作者 [ 金庫堂 さま ]
ジャンル [ ジャンプスケアなしの短編フリーホラーゲーム ]
容量・圧縮形式 [ 69.1MB・ZIP, ブラウザゲーム ]
製作ツール [ Unity ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ plicy, unityroomでプレイ可能 / ダウンロード版(booth)を推奨 ]
配布元 https://www.dogmetyasuki.com/

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レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 9 /10 10/10 51/60 B
赤松弥太郎 7 /10 8 /10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:10

明るい未来は、そんなものは無い。

本作「exc.例外事象監視局」のジャンル名は「異変探しゲーム」。しかし、「8番出口」系(当サイトでも「魔女の庭にて」「Office10」を紹介済)とは異なるジャンルです。
複数の画面を切り替え、普段と異なる箇所が出現したらポイント&クリックで指摘する…1カ月前に例示した「I'm on Observation Duty」「日本事故物件監視協会」系の異変探しとなっています。
しかし、本作はかなり異色な部分が多くなっています。最初の1つは、画面の枚数・異変の種類が少なめなこと。しかも本作、「異変の辞書機能」が(現在のバージョン1.10時点では)実装されていません。異変はプレイヤー自身の手でメモする必要があるのです。

そう、本作ではゲーム内にメモ機能が実装されているほど、異変を自らの手でメモする必要があります。それが第2の、そして最大の類似ジャンルとの相違点。本作のゲームオーバー条件は、先述のポイント&クリック型異変探しゲームのような「ステージ内の異変が一定数溜まった時点」ではありません。
本作のゲームオーバー条件は、「画面左側の『現地調査員』が0人になる」「プレイヤーが殉職」の2点。そして、「現地調査員の増減」「プレイヤーへの襲撃」の条件も主に2つ存在します。それが「異変が消える前に指摘する」「異変が消えるまで放置する」…「どういうことだ?」とお思いでしょう。
「指摘した」「見逃した」ことによる被害量が異変によって異なるのです。「見逃すと致命的なダメージが来るが、指摘しても被害は出る」異変、「指摘すると被害が出るが、見逃せば被害0で済む」異変、場合によっては「指摘すると現地調査員を確保できる」異変もあります。
本作の異変の種類は少なめとはいえ、「指摘した」「見逃した」ことによる被害量を異変ごとにメモするのは、かなりの情報整理力が必要です。ゲーム内のメモ機能は文字サイズも占有面積も大きめで、なおかつサイズ調整機能は(現在のバージョン1.10時点では)実装されていません。監視画面を遮ることになりがちです。本作のメモは、使い慣れたテキストエディタで別の画面に用意しておいた方が良いでしょう。本作は起動直後はフルスクリーン固定ですが、Alt+Enterでウインドウモードにもできます。
なお、異変による被害は、異変が消える前にシフトが終了すれば被害±0で済みます。画面右に表示されている残り時間が少ないならば、「あえて放置」も攻略の1手段となります。

さて、本作、「異変を『指摘した』『見逃した』効果をメモする必要がある」と言うことは…当然、死にゲーとなります。現地調査員が0人になったらゲームオーバー。セーブをロードして再開する必要があります。「犠牲が避けられない」と言う本作の仕様上、下手な箇所でのセーブは詰む危険があります。セーブはこまめに。3つのセーブを都度分けて記録してください。
プレイヤーが殉職した場合の処理は若干異なります。現地調査員および経過日数はそのまま(前プレイヤーの経過日数まで自動的に進む)。「プレイヤー名」だけ新しく設定する必要があります。ご丁寧に、以前登録したプレイヤー名の再登録はできない仕様。進行状態は継続なので、プレイヤーの変更は「フレーバー」でしかありません。しかし、その「フレーバー」こそが、本作の冷たい世界観を嫌が応にでも盛り上げてくれるのです。

そう、本作はプレイ中に見えてくる残酷で無機質な世界観こそが醍醐味。「SCP」「the Backrooms」など「科学的アプローチで扱われる怪異」と言う無機質な恐怖が、本作では取り入れられています。本作をクリアするために、プレイヤーは「怪異に対する科学的実験」をする必要があるのです。他人や自分を犠牲にして。
そんな本作の清涼剤となる人物が、ヒロインにして本作唯一の顔グラのあるキャラクター・都築。初対面では「事務的美少女」的なアプローチを魅せる都築は、ストーリーを進めるにつれ、人間臭くお行儀の悪い様々な側面を見せてくれます。都築のキャラクター性を調査することも、本作のEND条件の1つになる…のでしょう。
実をいうと、私のプレイでは都築との会話をほぼコンプリートしてから異変探し本編を進めていたため、END1からEND2はスムーズに進められました。END1もEND2も、異変探しと都築との会話を粛々とこなせていれば到達できます。そのプレイ時間は1~2時間ぐらいでしょう。
ストーリー上の選択肢・フラグ的な意味ではEND条件は厳しくありませんが、先述の通り異変探し本編の「リソース管理」「覚えゲー」要素が若干厳しく、「一発死」も襲い掛かってきます。物語の栞と異変のメモ、2つの意味での「記録」をしっかりと取ること、それが本作の最大の攻略法です。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:7 グラフィック:8 サウンド:9

一通りじゃない それを愛したい

 「8番出口」のヒットで、巷は間違い探しゲームの大氾濫です。よくできたものもあれば、そうでもないものも当然あります。
 本作も紹介だけ見て、似たようなものかと思いきや、間違い探し×ホラー的演出の組み合わせ、という点でしか似ていません。
 まったく異なるものです。ゲーム性も、メッセージ性も。

 本作において、間違いを探すことは容易です。
 正解の画面といつでも見比べることができますし、ログを見れば、どの異変が発生したのかだいたいわかります。
 時間制限も緩く、3画面あっても難なく見つけられるでしょう。

 本作の主眼はそこではなく、報告するか、しないかの二択にあります。
 異変はプレイヤーがすべて把握できることを前提に、敢えて触れないという選択肢を用意しているのです。
 プレイヤーの選択によって、本作のリソースである「調査員」の損耗が変わります。
 放置した方が損耗を抑えられる異変も多数存在する一方、放置するととんでもないことになる異変もあります。
 どちらがマシか、初見でわかるわけがないので、とりあえず試して、記録していくしかありません。
 作中のメモ機能は貧弱なので、作品の外で、他のツールを使った方がいいと思います。

 しかしその結果、戦術性が高まっているかと言うと。
 結局覚えゲーになってしまう、という間違い探しゲーム全般に言える問題は、まったく解決していません。
 ゲームの中に作り込める間違いは、どうしても有限種類なんですよ。本作だってバリエーションは何十種類もありません。
 二択でどちらを選ぶべきか調べる、という作業が終われば、あとは調べたとおりに行動する、という作業が始まるだけです。
 どう足掻いても作業です。

 むしろ二択を取り入れたことで、ゲームがワンテンポ遅れてしまってます。
 これが8番出口なら、間違いを見つけたら引き返せば、初見だろうと先に進めます。
 一方で本作は、報告するか、しないか、どちらが得かは両方試さないとわからない。
 初見では、正解を選んだかどうかすらわかりません。
 その理不尽さを緩和するためでしょう、本作には手動セーブスロットが1つだけ用意されています。
 ゲーマーとしてはそれをフル活用、セーブとロードを繰り返し、異変の報告と放置どちらが有利か調べ、できる限り調査員が減っていないデータを残そうとします。
 結果、日数が全然進まないうちに飽きてしまうのです。

 それもこれも、本作が目標を設定しないのが悪い。
 8回間違い探しに正解すればクリア、とかのわかりやすい目標が、本作にはまるで見当たりません。
 たとえば、15日で助けが来るから、それまでの間30人分の肉壁で生き残りましょう、ということなら、許容できる損耗が逆算できるじゃないですか。
 本作はそうした、未来への展望とか、計画を一切許しません。
 開幕早々、元の世界に戻る見通しはない、とハッキリ言われますし。あまつさえ、主人公が理不尽にも回避不能な突然死を迎えることさえある。
 これでは、プレイヤーが手応えや達成感を感じることは難しいでしょう。

 ゲームとしては、本作の戦術性は低く飽きやすく、戦略性は見通しがまったく立たない、という言い逃れしにくい欠点があります。
 ボクのように、ゲームを楽しみたいと思っている人にとっては無視できない問題でしょう。
 ただ、ねえ。
 本作のやりたいことがそこにあるから、しょうがないんですよねえ。

 来る日も来る日も、何も変わり映えしない作業の繰り返し。
 飽きたプレイヤーは、同じ部屋にいる都築にちょっかいを出します。
 「ひよこみたいに何度も挨拶しに来なくていい」?
 違いますよ、他に面白いことが無いから話しかけてるだけで。
 プレイヤーにとっては所詮都築も、ランダムに選ばれたパターンに応じて台詞を吐くだけの存在です。パターンは限られています。
 が、それでも、その台詞には思いがある。受け手として考える余地がある。
 だから何度も話しかけて、そしてストーリーが進行していきます。

 ……最後までプレイすれば、なぜこんなゲーム性を採用したのか、理解はできますよ。
 行動を選ぶということ、その結果変わるものと変わらないもの、そういったテーマに本作は踏み込んでいきます。
 何もかも停滞し、時が止まったかのようなこの世界で、淡々と人が死んでいく。
 そういう世界観から伝えたいものが、たしかに本作にはありました。

 ですが、ゲームとして面白いか、先に進めたくなるかとなれば、話は別です。
 作者は次に何が起きるか全部知ってるから、プレイヤーにとって、目標もなければ新しい驚きもない状況がどれだけしんどいか、低く見積もりすぎるんですよ。
 都築との会話を駆動装置とするなら、見せ方が下手です。毎日最低1つ、なんらかの新しい会話をアンロックしてやれば良かったのです。
 未読の会話を優先して表示する仕様なら、プレイヤーにとっては毎日、新しいことを確認する導線になったはずです。
 次に都築はどんな話をしてくれるか、どんな一面を見せてくれるか、それがただ作業を繰り返すだけの毎日で、生き残りたいと思える支えになったでしょう。

 現状でも都築はかわいいけど、今のままではプレイヤーは離れちゃいますよ、きっと。
 ボクも攻略テキストが無かったら、虚無に蝕まれて投げてたと思いますから。

ハマリ度 : 7 / 10
 スキップの挙動が安定しないのは、すぐ修正すべきポイントの1つ。会話の最後でOFFになるのが期待される挙動のはずだが、会話の途中で止まったり、会話最後でONにしてから会話を終わらせると次の会話までONの状態で始まり、かつスキップされなかったりと一貫性の無い動きをする。
 セーブが手動なのは、うっかりすると忘れる要注意ポイント。オートセーブを採用できない理由もなんとなくはわかるが、スロットが1つしかないのだし、毎日終わりにセーブ確認ダイアログを出してもいいくらいだと思う。
 エンディングにも不満がある。言いたいことはなんとなくわかる程度で、おそらく100%を伝える気もなさそうだが、それにしたって饒舌すぎる。今まで培ってきた叙情の中で異質すぎて浮いている。本作のメッセージ性から見ても、「作品が出したものを解釈させる」だけでなく、もっとプレイヤーの想像に任せる部分があって良かったのではないか。
グラフィック : 8 / 10
 本作の顔と言えるグラフィックだが、間違い探しには正直向いていない。本作は間違い探しそのものに力点を置いていないし、一目瞭然な間違いだけでいいと思うのだが、時として何が描いてあるのかわからないような間違いもあって惑わせてくる。
 UIは、監視作業中はともかく、日常場面はあまり洗練されていない。ヘルプにあるとおり、クリックポイントは都築・書類棚・クレジットが書いてある黒板だけなのだが、どこをクリックすれば反応するのかが初見ではまったくわからない。いっそ都築だけで良かったのではないかと思う。書類棚のイベント発生前からクリックできるから、他にも何かあるのかと探してしまう。
サウンド : 9 / 10
 曲は1曲だけ。すべてがこの曲で終わり、この曲で始まる。
 効果音も含めて、この世界のリアリティの乏しさを演出していて、それが心地よい。

 本作でしか味わえない種類の感動はたしかにあったので、これからプレイする方はぜひ、気長に付き合ってもらえればと思います。
 虚無もまた、本作の味です。
 まずは10日くらい、都築をいじりながら辛抱強くやってみてください。


(補足)
リリース当初の1.00では、セーブファイルは1つのみ、オートセーブもありませんでした。最新版の1.10ではオートセーブも実装され、セーブも3か所に増えたため、よりプレイしやすくなっています。