■ 三代目レビュー アドベンチャー 20
Lost in the Woods 佐藤さん暇つぶしチャット.exe 魔女の庭にて

【 Lost in the Woods 】

Lost in the Woods
ジャンル [ サイコロジカルホラー ]
作者 [ delulu girl さま ]
容量・圧縮形式 [ 528MB(インストール後)・Steamからダウンロード ]
製作ツール [ RPGツクールMZ ]
言語 [ 英語・ドイツ語 ]
備考 [ 要・Steamクライアント ]
配布元 配布元

深き森の新妻

森深くの湖畔に住む若き夫婦。しかし、その仲は冷え切っていた。大喧嘩をして以降、言葉一つ交わさぬ日々が続いていた。
妻・Violetはそのことを悲しみ、解決しようと、夫の無くした仕事道具・お気に入りの服・思い出のタイムカプセルを探し出そうと外に出る。
やたらと夢見がちなViolet。その目に映る湖畔の情景は、刻一刻と変わっていく。…いや、Violetの見ているこの景色は、果たして真実なのだろうか。

本作の「真実」、ホラーに慣れている方ならばオープニングどころかキービジュアルの時点で大体察しているでしょう。
本作は英語・ドイツ語で繰り広げられる…日本語非対応の上、「サイコロジカル」である以上、慣れ親しみのない専門用語がクライマックスで連発されます。
それでも、本作のホラーは問題なく伝わるでしょう。万国共通の「絵」が雄弁に物語るからです。
初っ端から「現実感のない」風景。ストーリーを進めるたびに、その風景はグロテスクに悪夢的に様変わりしていきます。

本作のENDは2種類。オープニング時点で明言されています。その選択肢も、ストアページにある「あの画像」。1つのENDを見た後に、選択肢まで巻き戻る機能も実装されています。
そのため、本作を読了するために、時間的・難度的な負担はほとんどありません。30分ほどで読了できる物語です。
しかし、精神的な負担は甚大なものです。先述の悪夢的な風景描写もさることながら、我々日本語話者だと、外国語+専門用語の多いセリフが滔々と流れるシナリオに置いて行かれがちです。
「Violetと夫に何が起こったか」「Violetが言うモノローグと事実との齟齬」など「考察すべき・考察したくなる要素」がフルに詰まった本作において、証拠たるシナリオを理解できないことは大きな短所となります。
PCOTなどの自動翻訳ツールを使うのもいいでしょう。RPGツクールMV, MZ製のゲームは、メッセージウィンドウが半透明のものが多いため、PCOTなどのOCR(画像からの文字認識)は誤動作を起こしがちです。しかし幸いなことに、本作のメッセージウィンドウは透かしの無いもの。誤訳は少なくなっています。

Lost in the Woods Lost in the Woods

先述の通り、本作の魅力は万国共通の「絵」で物語る幻想的かつ「信頼できない」ストーリーにあります。時に描写を素直に受け取りながら、時に翻訳ツールを使いながら、本作を理解していきましょう。

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【 佐藤さん暇つぶしチャット.exe 】

佐藤さん暇つぶしチャット.exe
ジャンル [ デスクトップ侵食型チャットホラー ]
作者 [ DankHearts さま ]
容量・圧縮形式 [ 577MB(インストール後)・Steamからインストール ]
言語 [ 日本語・英語 ]
備考 [ 演出手法として、プレイヤーのPCに保管された情報(ユーザー名・位置情報など)を取得する ]
[ アプリ本体の他、ブラウザも利用する ]
[ デスクトップ表面に消せない演出が表示される ]
配布元 配布元

電子の怨霊は、電脳の悪夢を見せる。

新興のチャットアプリ「佐藤さん暇つぶしチャット」。「あなた」はそこで、愚にもつかない独り言を眺めつぶやく1ユーザである。
そんなあなたの元に、「ミナ」と名乗る見知らぬユーザーからのメッセージが届く。ミナは、あなたに暇つぶしとして「ごっこ遊び」を持ちかける。
あなたやミナの退屈で不幸な人生の原因、それは「A・R・G」という組織の陰謀だった…そう言ってミナが投げてきたURLは、普通のニュースサイト・家具の通販サイト・公共の行方不明者情報…この中に「A・R・G」の陰謀が隠されている…そうミナはささやいた。
ニュースサイトのコメント欄に巣食う「A・R・G」のメンバー…その答えと根拠ならば「こじつけ」で済ませられただろう。しかし、家具の通販サイトと行方不明者情報の奇妙な一致、とあるユーザーのタイムライン、とある企業のホームページ、本来ならば関連性の無いサイトが、ミナの導きによって奇妙に繋がっていく…。
いったい、この「陰謀論ごっこ」でミナは何を求めているのだろうか。あなたは…謎に惹かれて?…ミナの幸せを願って?…むしろミナの不幸を心から楽しんで?…この「陰謀論ごっこ」を進めていくのであった。

「霊域探査室 《閲覧注意_残響》」の中で触れた「ARG」というジャンル、「ARG」という名前が付いたのはごく最近ですが、同様のゲームは「Web」なるものが生まれた時から存在しました。
FLASH作品「赤い部屋」「こ~こはど~この箱庭じゃ?」など、現実のPC, ブラウザを模した画面を用いたゲームは、20年以上前から存在していました。
昨今でも「Ayaのホームページへようこそ!」など、ブラウザを模した独立アプリのゲームはリリースされています。
そんな中で紹介する今回の作品、「佐藤さん暇つぶしチャット.exe」。チャットアプリを模したスタンドアロンの画面・Web上のコンテンツ、双方を行き来する謎解きゲームです。その上で、数々の「黎明期のWeb~令和のWebのホラー演出」を組み込んだ当作品、リリース当初にかなり話題になった作品です。良い意味でも悪い意味でも。Steam評価でも「賛否両論」を巻き起こした作品です。

本作の「賛」を巻き起こしたのは、その現実と虚構が曖昧に混ざり合うストーリー。「ミナ」のグラフィックこそ二次元のそれですが、本作の舞台は現実とほぼ同じリアリティライン。現実のYahooニュースやX(Twitter)を模したサイトを、プレイヤー自身が普段使いしているブラウザで閲覧し、本作のヒントとストーリーを獲得していきます。
そう、本作はあからさまなほどに謎解きゲーム。ミナの投げた謎の回答を「佐藤さん暇つぶしチャット」に入力してストーリーを進めていきます。
現実のニュース記事(https://www.gamespark.jp/article/2026/03/15/163949.html)でも取り上げられている通り、本作には多くの誘導措置が設定されています。

…など、ストーリーを真面目に進める分には必要十分な誘導が揃っています。
ストアページには「しかし、あまり距離を置かれる発言をしてしまうと、チャットから退出されてしまうことも…?」とゲームオーバーを示唆されているものの、私のプレイでは発生しませんでした。謎解きのために5分近く放置したり、何度も間違った回答を入力したにもかかわらず、ミナは積極的にこちらにヒントを与え、回答へと導いてくれました。
ストア内の記述やストーリーでの示唆を見ると、恐らくはセクハラ発言・出会い目的の発言に反応しているものと思われます。あくまで謎解きや会話は真面目に行いましょう。

そう、このチャットの融通の利かなさが、本作の「否」の第一理由。ミナが反応してくれる言葉は意外に少なく、「謎解きの回答」「期待された返答」以外の言葉をチャット欄に入力しても、基本的には冷たい反応しか返ってきません。ひどい場合は先述の通り打ち切りゲームオーバーになる場合も。
大体の人間(男女問わず)にとって、「冷酷無情な女性」をヒロインと認識することは難しい…ヒロイン「ミナ」のキャラクター1つで引っ張る本作品において、その唯一のキャラクターに魅力を感じられない人にはつらいゲームかもしれません。
ミナが「冷酷な女性」である点…特に恋愛目的のメッセージに冷酷な点には、ストーリー上れっきとした理由があります。冷酷さを含めたミナのパーソナリティを紐解くことも、本作の謎解きの一つなのです。

そして、もう1つの「否」の原因が、「デスクトップ画面を乗っ取る」演出。そう聞くと、古の「ブラクラ」的、もしくはタイトル通りの「.exe」ゲーム的なジャンプスケア演出を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。事実、ストーリーの要所で「デスクトップ画面を乗っ取るホラー演出」が効果的に出現します。
しかし、本作の「デスクトップ画面の乗っ取り」は、一時的なホラー演出だけではありません。「佐藤さん暇つぶしチャット.exe」の起動中、デスクトップ画面上には常に演出が覆います。演出を止めるには「佐藤さん暇つぶしチャット.exe」左上の×ボタンで終了する他ありません。
走査線フィルターの演出は設定でOFFにできますが、「画面4隅にブラウン管のような歪曲が入る演出」を消す設定は(2026.03.22現在のバージョンでは)存在しません。
この4隅の歪曲、意外に範囲が広く、特に横幅は100ピクセル以上も隠れます。ブラウザを全画面に近いサイズで開いている方だと、左上の閉じるボタンどころか、ページ内容の一部まで隠れてしまう可能性があります。
ホラー演出の中にも「実写を模したAI生成の事故映像」など、人によっては拒絶反応を引き起こす不謹慎なものが含まれます。終盤の演出であるためネタバレになるかもしれませんが、あらかじめ心して…場合によっては「捨」を選択する理由として、触れなければいけない点と判断し、本稿で言及することにしました。

佐藤さん暇つぶしチャット.exe そんな賛否両論の激しい本作、私は当然「賛」として本作を取り上げました。しかし、本作が「強烈な」「拒絶される要素の多い」作品であることも確かです。
本稿や他のサイトから本作「佐藤さん暇つぶしチャット.exe」に正の興味を持った方は、手軽にプレイして、重い読後感を堪能してください。「胸糞要素」…不幸・不快感を味わうエンタメ要素もかなり強い作品である点もご留意ください。
読了までには1時間強。謎解きに手間取る場合でも2時間強でクリアできる作品です。

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【 魔女の庭にて 】

魔女の庭にて
ジャンル [ 異変探し ]
作者 [ のぎいち さま(Noctroom) ]
容量・圧縮形式 [ 118MB・ZIP ]
製作ツール [ ティラノビルダー ]
言語 [ 日本語・英語 ]
備考 [ ダウンロード版(Windows)のみ ]
[ カンパ窓口あり(booth・490円) ]
配布元 配布元

魔女の庭は夢の中。抜け出さぬ限り目覚めない。

そこは絵本のようなモノクロームの世界。伸びるのは石畳の一本道のみ。ただし延々と。
そう、ここは異変が起こるループ世界。異変があれば入口に戻り、異変が無ければ出口をくぐる。その繰り返しを9回正解することで脱出できる世界。
そして、一人の少女がそこに捕らわれた。最低限のルールのみ知らされた状態で。
ルールを教えた者も、この空間に捕えた者も、何も分からない少女、そしてプレイヤー。異変を探し当て、この世界から抜け出せば、それが分かるだろうか。

本作は「8番ライク」としては短編で簡単な作品。その理由は、短い道程とシンプルな操作にあります。
本作の操作は前進と後退のみ。マウスでのボタンクリックの他、キーボードの上下とW, Sにも対応しています。3Dの8番ライクのように、異変を見つけた時に後ろを振り向く必要がありません。また、カメラも固定であるため、「視点を変えないと・カメラをズームしないと視認できない異変」も存在しません。
全ての異変は「前進・後退だけで見える画面の中」に必ず存在しています。

それでいて、本作は「考察しがいのある要素」が充実しています。「語られるストーリーが少ない」という意味ではありません。むしろ、セリフによらない「語られるストーリー」は豊富です。
入口の上に掛かった看板。進行状態によってその文言は変わっていきます。抜け出せない少女をあざ笑うかのような余裕のセリフから、抜け出していく少女に対して「やめて」と懇願するかのようなセリフへと…。
抜け出した後のENDも、全くセリフは無いものの雄弁です。異変を全閲覧するとそのENDも変わるため、ぜひコンプリートを目指してください。
プレイ時間は全異変のコンプリートを目指す場合でも1時間未満。異変の出るコースは体感で7割。未視聴の異変が出る確率も高め(既視の異変が出ないわけではない)、「致死性の(触れる・追いつかれるとゲームオーバーになる)異変」も無いため、「8番ライク」でありがちなストレスもさほど感じることなくプレイできます。

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